2023/02/05 余白の空間

余白の空間

王子の家”はちょっと特殊ではある。

前面道路からの延長線上にある土間の吹抜空間はリビングというよりも、

余白の空間である。

ワークショップが開けたり、

日曜大工も出来たり、

そんな将来的な色々の可能性を担保するための、

可能性を秘めた積極的な意味での余白の空間である。

 

余白の空間

 

お施主さんはゲームクリエイターと放送作家のご夫婦で、

私のところに相談にいらした時に、

昔の八百屋さんの店先にあった土間のような空間があったら、

と言っていたのが今でも印象に残っている。

その時このご夫婦は一般的な住宅を望んでいるのではないなと思った。

広いリビングがあって、といったような住宅ではなく、

ご自分たちでご自分たちならではの生活を創造していく、

そんな印象があった。

 

余白の空間

 

なので私の方では、

基本となる大きな空間構成とそれに適した動線計画、

そして敷地周囲との関係性をメインに設計した覚えがある。

そして決して大きくはないこの住宅の半分をこの余白の吹抜空間にあてた。

この吹抜の空間にあるのは大きな本棚と樹、

そして広めの踊り場がある折り返しの階段、

あとはトップライトを含めた大きな開口部くらいである。

つまり大きな空間構成だけを設計した。

下足入れも作っていないし、

そもそも玄関らしい玄関がない。

仕事机や棚収納もお施主さんが設置した。

 

けどこのお家の室内風景はとても魅力的である。

普通の住宅にはない魅力がある。

その住み手ならではの生活や価値観が浮き上がってくるような、

その下地となる基本的な空間があればいい、

それが本当の意味での良い住宅かもしれないと思う。

 

余白の空間

現在工事中の”工房のある家”のお施主さんも、

”王子の家”を知って私の事務所に相談にいらしてくれた。

”工房のある家”のお施主さんご夫婦はお二人とも建築学科の大学院卒で、

現在も建築のお仕事をされている。

このお二人も自分たちならではの生活空間を創造していく場としての住宅を求めて、

それゆえ工房が中心にあるお家になっている。

 

※このページの写真の撮影は全て 新建築社によるものです。