写真論

『 写真論 』(スーザン・ソンタグ著)

写真についての本には、
ベンヤミンの『写真小史』やバルトの『明るい部屋』、
富岡多恵子の『写真の時代』などといった優れた本があるけれど、
その中でもスーザン・ソンタグの『写真論』は、
もっとも読み応えがあったもの。

決して読みやすい文章ではないけれど、
何度も推敲を重ねたらしいその言葉は、
写真の本質へと厳しく絞り込んでいく凄みがあり、
その分、被写界深度の深い文章になっている。
この本が書かれたのは30年以上も前だが、
その内容のピントは現在にも充分に届いているように思う。

1839年8月19日、
フランス学士院で催された科学アカデミーと芸術アカデミーの合同会議にて、
写真術が詳細に公表された。
パリの歴史画家ポール・ドラローシェは写真を見て、
「これで明日から絵画は死んだ」
という有名な言葉をつぶやく。
(この後の絵画と写真における表現形式の相互作用と変化の経緯は面白そう)
そして未読のまま私の本棚に並んでいる
『リコンフィギュアード・アイ』 ~デジタル画像による視覚文化の変容~
(ウィリアム・J・ミッチェル著)
という本の帯には、
「誕生後150年を経た1989年を境に、写真は死んだ」
との言葉がある。

絵画や写真は私たちの視覚認識に大きな影響を与え続けてきた。
そして現在私たちの身の周りに溢れているデジタル画像は、
“見る”ということを、
どのようにリコンフィギュア(再構成)しているのだろう?