形を読む

『 形を読む 』(養老孟司著)を読む。

副題は「生物の形態をめぐって」。
養老氏の本は初期の頃の方に良いものが多い。

解剖学者による形態学についての本。
形態学では形を扱う。
しかしこの本では、
形の「見え方」ではなく「どう見るか」を、
つまり形態の「意味」を扱っているので、
『形を読む』なのだろう。

(1)数学的・機械的
(2)機能的
(3)発生的
(4)進化的
といった4つの観点から、
主に生物の形態の意味を探っていく。

設計とはさまざまな要件を検討しながら、
それを最終的には形に翻訳することなので、
当然そこには形態学的な思考も必要となる。
よってどうしても、
建築と重ね合わせながらこの本を読む事になる。
生物と人工物(建築)との違いはあるが、
その違いがあるがゆえに、
かえっていろいろと気付かされることも多く刺激になる。
特に構造と機能の関係についての考察が興味深い。

形の「見え方」の形態学は、
できるだけ「客観性」に軸を置こうとしたものだとすれば、
(完全なる客観というものがあるとすれば、だが)
形態の「意味」を読む形態学は、
ある意味「主観」の問題にもなる。
しかし突き詰めていけば、
「意味」を読むのも「主観」を持つのも、
形を観察するその人の脳の機能である。
それではヒトは形態について何通りの異なった意味を見るのか?
それを著者はとりあえず先の4つに分類している。
つまりそれは、
人に共通としてあるであろう、
脳の機能形式をも意味している。