”王子の家”は2階建てか3階建てか?

”王子の家”についてお問い合わせを頂きました。
吹抜に2つ階段が見えるので2階建てではなく3階建てでは?
とのことでした。
以前にも同じようなお問い合わせがあった気もしますので、
より詳しく回答をさせていただきます。

確かに3階建てでは?と思われるのも仕方がないと思います。
しかし先に結論を申し上げますと、
”王子の家”は法規的にもれっきとした2階建ての住宅です。
もっと正確に言いますと、
2階建て+小屋裏収納の建物です。

小屋裏収納の詳しい取り扱いについては、
各自治体によって異なることもありますが、
基本的には天井高さ1.4m以下の部屋を言います。
(その他にも複数の条件があるので要注意)

まずは吹き抜け空間部分についてです。
階段が2つ見えますが、
床は階段の折り返しの広めの踊場部分にしかないので、
2階建てになります。
では踊り場から上がる階段はどこへ行くかと言うと、
別の2階の空間である寝室に行きます。
つまりスキップフロアになっています。

 

 

吹抜では無い空間側の断面スケッチが上です。
吹抜空間とは対照的に、
洗面・浴室、居間(和室)、キッチン、寝室といった諸室がぎっしり詰まっています。
この断面設計のミソは最下層と最上層にあるピンク色部分の配置の仕方にあります。
この2つの部屋は納戸とウォークインクローゼットで、
天井高さ1.4mの小屋裏収納扱いの空間になっています。
法規的に小屋裏収納は階数に含めませんので、
上図の左側は1階が洗面・浴室、2階がキッチン、
右側は1階が居間(和室)、2階が寝室、
となっています。
つまり左右で床の高さに段差のある、
スキップフロアの2階建て、
となっています。

3階建てにした場合、
構造設計基準がさらに厳しくなったり、
準耐火基準仕様の建物にしなければいけなかったりと、
いろいろな面でコストが高くなってしまいます。

”王子の家”はコスト上の理由で2階建てにしつつも、
小屋裏収納を効果的に配置することで収納量を確保し、
スキップフロアにすることでいろいろな視線の高さや方向から、
吹抜の樹を見ることができる家になっています。

お施主さんからのご要望でも多いスキップフロアですが、
構造設計では注意が必要です。
上図の左側と右側の境目が構造的に要の部分になり、
構造設計上細心の注意が必要になります。
例えば、
中央に階段と吹抜があるスキップフロアの細長い建物、
というのはよくあるタイプの住宅ですが、
特に木造では要注意です。
建物の長手方向に視線がのびて各フロアがつながるようにしたくても、
構造的には吹き抜け部分に構造壁が必要になるのが通常だからです。
この部分の構造上の検討をきちんとしないまま構造壁を無くしてしまうと、
とても不安定な建物になってしまいます。

”王子の家”では、
上図の左側と右側をそれぞれ単体の建物として構造的に成立させて、
その2つをくっつけた状態でも構造上のバランスを確認して、
さらに吹き抜け空間側とくっつけた状態でも構造上のバランスを確認して・・・
と3段階にわたって細心の構造上の検討を重ねています。
軸組み模型も作って筋交いや金物の取り合いに無理や無駄がないかも確認します。
さらに”王子の家”では上図の建物に寄りかかる形で、
吹き抜け空間の構造が確保されています。
それゆえ”王子の家”は木造でありながらも、
写真のような開放的な吹き抜け空間が成立可能となっています。