住宅コンセプト(吹き抜け、トップライト)|建築家思考|東京・渋谷の設計事務所

建築家思考の住宅コンセプト(吹き抜け、トップライト)

住宅コンセプト、テーマ・・・ 。それは、難しいけど、とても深くて、面白い・・・

クラスター・ハウス、吹き抜け、住宅コンセプト

(”クラスター・ハウス”)

 

 

Contents
01|住宅コンセプト 、テーマとは・・・?
02|リビングは、何のための部屋ですか?
03|住宅コンセプト 考: 家の原型
04|住宅コンセプト 考: 間取り?(nLDK?)
05|住宅コンセプト の対象(「部分的な人間」と「全体的な人間」)
06|住宅コンセプト の難しさ
07|住宅コンセプト 実例 ~吹き抜け、トップライト~
・・・(1)つなぐ空間(吹き抜け、トップライト)
・・・(2)”保土ヶ谷の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
・・・(3)”上丸子の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
・・・(4)”鶴ヶ峰の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
・・・(5)”クラスター・ハウス”の場合(吹き抜け)
・・・(6)”中目黒の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
・・・(7)”王子の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
・・・(8)”空隙の家”の場合(吹き抜け、トップライト)
08|住宅コンセプト のまとめ:建築家選び

 

 

01| 住宅コンセプト 、テーマとは・・・?

 

住宅のコンセプト、テーマとは何だろう?

もし住宅設計というものが、

寝室、キッチン、浴室、リビング(居間)といった必要な諸室を、

平面的にも立体的にも機能的に合理的に配置していくことだとすれば、

すでにほとんど開拓されつくしているような気もしてしまう。

 

それゆえなのか、

住宅情報誌でみる多くの住宅は、

住宅と周囲の関係性とか、

家族同士の関係性といった住宅コンセプト・テーマから、

家全体の構成を考えるというよりはむしろ、

リビング(居間)や寝室といった部屋ごとの充実を図り、

インテリアのバリエーションを競い合っているようにも見える。

狭小住宅においては、

いかに工夫やテクニックをこらしたプランニングをして狭さを克服し、

見た目の開放感を演出するかだけに、

焦点があてられているものも多いように思う。

 

 

※参考リンク

狭小住宅についてご興味がありましたら、・建築家思考の 狭小住宅をお読みください。

 

 

内側の論理だけで設計すると、

建物は周囲に対して閉鎖的になり、

周囲にある現実の環境とは何も結びつきがないままに、

室内は内向的になってインテリア化していく。

しかもこうした建物はスタイル化(パターン化)しやすく、

それゆえ自己増殖もしやすい。

敷地の場所や個性からはほとんど影響を受けないからだ。

部屋だけでなく住宅自体もが自閉症気味になっていく・・・。

 

これは決して外部に対しての開口部の大きい小さいとかいった問題ではなく、

住宅のあり方として、

外部世界・社会との脈絡や回路を断ってしまっているように感じる。

内側の論理だけでなく外側の論理とも結びつけて、

住宅ならではの住宅コンセプトを定めて、

設計をすることが難しいのは確かだが・・・。

 

 

 

02|リビングは、何のための部屋ですか?

王子の家、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト、土間のある狭小住宅

(”王子の家” この写真は新建築社によるものです。カメラマン:楠瀬 友将)

 

住宅コンセプトを考えるにあたり、

現状多くの住宅において力点が置かれているリビングについて、

考えてみる。

 

これから家(マイホーム)を建てよう、

そう考えている方は、

どんなおしゃれなインテリアのリビングがいいか、とか、

リビングを最も重要視して考えている方も多いのではと思う。

けど落ちついて考えてみると、

住宅の部屋の中でリビングほど意味不明の部屋もないように思う。

洗面所や浴室、キッチン、寝室といった部屋は分かりやすい。

洗面所は手や顔を洗ったり歯を磨くところ、

浴室はシャワーを浴びたりお風呂に入るところ、

キッチンは料理を作るところ、

寝室は寝るところ、

である。

けどリビング(居間)って何をするための部屋なんだろう?

”居る”ところ?

”生きる(リビング)”ところ?

一家団らんの場所?

 

いろいろな捉え方・考え方があるだろう。

それは設計者も同じだ。

そしてほとんどの設計者もリビングを重要視し、

リビングを中心に家を考え設計していることと思う。

そのためリビングを見ると、

その設計者の住宅に対する考え方が分かることが多い。

 

 

03| 住宅コンセプト 考: 家の原型

モンゴル、ゲル、住宅コンセプト、家の原型

 

住宅コンセプトについて考える始点として、

そもそも家族が集まり暮らす住宅・家の原型とはどんなものだったのか、

を考えてみよう。

 

シルクロードを横断している時に、

モンゴルのゲルを見せてもらったことがあった。

ゲルとは家畜を伴って季節ごとに移動する遊牧生活に適した移動式テントである。

ゲルはモンゴル語で「家」を意味する。

円形のテントで中央部に穴が開いており、

そこが天窓になっている。

その真下にカマドがあり、

(天窓から煙が外に排気されるようになっている。

つまりテント自体がフードのようになっている)

そこを中心に、

周縁部に寝る場所があったり小さな家具が置かれていたりする。

日本では旧石器時代から中世まで使われた、

主要な住居様式の一つである竪穴式住居でも、

同じようなものだったと想像できる。

 

すべての生活行為はひとつの部屋で行われており、

つまり家の原型は、

今風に言えばワンルームだったと考えられる。

 

 

04| 住宅コンセプト 考: 間取り?(nLDK?)

51C型、nLDK、住宅コンセプト

(公営住宅標準設計51c型)

 

住宅コンセプトについて、

家の原型を始点として考えた場合、

ワンルームというものが浮かび上がってきた。

ではそれに対して、

現状多く見られるnLDKとは何なのか、

いつnLDK形式が生まれたのか?

 

建て売り住宅やマンションでは、

依然としてnLDKタイプが支配的である。

nLDKの基点となるDK(ダイニング・キッチン)という和製英語は、

1955年に住宅公団が新しく採用した間取りに付けられたものである。

「間取り」とは、

ここはL(リビング)でここがDKといったように、

ある平面をエリア分けして記号付け(ラベリング)していく作業、

とも言える。

 

かつて日本の小住宅の美徳ともされていた「転用論」というものがある。

「転用論」とは机や布団、ちゃぶ台や座布団などのしつらえを変えることで、

居間になったり寝室になったりと、

ひとつの部屋にいくつもの機能を持たせることが出来るというものだ。

これは

・建築家思考の狭小住宅

で紹介した”ちっちゃな家3原則”の中の”兼ねる”に近い考え方だ。

それに対して、

大阪や京都、愛知などの長屋を調査した西山夘三は、

小住宅でも「食」と「寝」の空間は分離することが必要と考えた。(食寝分離)

こうした西山の理論が、

吉武泰水、鈴木成文らによる公営住宅用の標準設計「51C型」で生かされることになる。

「51C型」はDKのほかに和室が2室、

親の寝室と子供の寝室(就寝分離)がある13坪ほどの広さの2DKである。

この2DKは狭小住宅の窮余の策として生まれたのである。

 

nLDK、住宅コンセプト

その後経済が発展していき、

住宅の規模も大きくなって、

空間の機能分化も進行していく中で、

LD(リビング・ダイニング)やLDK(リビング・ダイニング・キッチン)など、

記号のヴァリエーションが増えていき、

nLDKのnは家族の構成員の数と関係づけられるようになっていった。

 

「転用論」によるワンルームの空間から、

食事・調理をする部屋(DK)と寝る部屋が分かれて(食寝分離)、

というように、

分かりやすい行為の部屋が分離していった。

そして寝室も個人単位で分離していった。(就寝分離)

そして残った行為をすべて引き受けて残ったのがリビングという部屋で、

分離された部屋同士を連結するために新たに生まれたのが廊下、

と考えることも出来る。

 

けど見方を変えれば、

キッチンは本当に調理をするためだけの部屋なのか、

寝室は本当に寝るためだけの部屋なのか、

キッチンや寝室で飲んだり話したりすることもあるではないか、

とも思う。

 

人間の生活行為にはそんな明確な区切りがあるわけではない。

つまり住宅をnLDKに区分けすることは、

それはある意味フィクションで、

ひとつの約束事でしかないとも考えられる。

寝る時に寝室に行く、

それはつまり、

部屋の用途の区分けに応じて、

人間の方から生活行為を合わせにいっている、

そうとも考えられる。

 

ワンルームからnLDKへ、

その中で生まれたのが壁と廊下。

そもそも日本の薄い木下地の壁一枚で、

個室間のプライバシーが確保できると考えるのも、

ある意味約束ごとでしかないのかもしれない。

かつての日本の古い住宅では障子一枚だった。

心理的距離感がプライバシーの境界線だった。

プライバシーのあり方・考え方も変わった。

 

私は別にnLDKが良くないというつもりは全くない。

ただ、

無意識のうちにnLDKありきで考え始めるのも違うのではないか、

そんな根本的なところから住宅を考え直すことにも意味があるのではないか、

とも思う。

 

 

 

05| 住宅コンセプト の対象

 

オフィス・ビルや工場、店舗、といった住宅以外の建築が対象としているのは、

「部分的な人間」である。

人間の生活行為の中で、働く、食べる、買うなど、

ある程度明確で限定された部分に対して、

それらの建物は責任を負えばよい。

けれど住宅は違う。

住宅が対象とするべきは「全体的な人間」なのである。

ここが住宅と他の建築の最大の違いだと思う。

住宅は人間の生活へのかかわり方において、

他のどんな建築よりも全的なのである。

ここに住宅建築ならではの難しさや特殊性、面白さがあるはずだ。

 

 

06| 住宅コンセプト の難しさ

 

住宅設計の難しさについて、

かつて”等身大の居場所”という文章で書いたことがある。

 

・等身大の居場所 丸山弾さん設計の「永山の家」を訪れての批評文

(新建築 住宅特集2014年3月号に掲載)

新建築 住宅特集2014年3月号、住宅コンセプト

 

冒頭部分をここで引用する。

 


住宅設計の難しさとは何であろうか?

設計者はもちろん住まい手の生活スタイルや使い勝手などの具体的な要望を聞き入れ、

それらを出来るだけ建物という、

かたちのあるものとして反映させようと努力をする。

 

しかし設計者は同時に別のことも考えてしまう。

それは、その特定の住まい手のための住宅であるということからあえて一歩引いたもの、

そして先の要望と比べたら曖昧で抽象的なものかもしれない。

たとえば、現代での新しい家族のあり方とはどういうものだろうかとか、

そういった家族像にとっての適切な周囲との関係はどうあるべきかといったことなどである。

つまり設計者は目の前にいる特定の住まい手の具体的な要望を聞きつつ、

設計者自身で思い描く、

まだ曖昧でしかない新しい家族像というようなものとも対話している。

 

別の言い方をすれば、

前者は住まい手の生活や、

もっと突き詰めて言えば身体の延長といったような「内側の論理」、

後者は都市だとか社会とかいったような「外側の論理」、

とも言えるかもしれない。

そして時として前者ではなく抽象化された後者の方が、

建物の構成原理や社会に対するメッセージといったものにも結びつきやすい。

各々の住宅に個別の問題だけではなく一般性をも担わせることが、

ある意味設計者の美徳のようにも考えられてきた、とも思う。

住宅を設計する過程で住まい手と設計者の間で生じるギャップの多くは、

おそらくここに起因するような気がする。

私自身、この両者を何とか両立させたい、

両者は根底では繋がりがあるはずだと、

そう考えつつも、

そのギャップをなかなか埋めきれずにいて日々の設計を行なっている・・・。

 


 

この文章を書いたのが9年前。

この文章での「外側の論理」と「内側の論理」は、

先に述べた「部分的な人間」と「全体的な人間」にも通じると思う。

 

私たちが住宅を設計する時は、

基本的にはいつもひとつの家族を対象とする。

けどその家族は当然、

今の都市や社会の中で生きいる。

つまりその家族を通じて社会と接触もする訳である。

個を通して全体に接する、

そう考えると、

内側の論理を通じて外側の論理をとらえる、

ということになるのかもしれない。

つまり内側の論理と外側の論理は別々なのではなく、

ひとつの家族においても、

たったひとりの個人においても、

根底では通じているはずだと考えられる。

そう考えると、

たったひとつの家族のための、

たった一人のための、

たったひとつの小さな住宅においてでさえも、

家族同士つまり人間と人間の関係、

家族と社会の関係、

個人と社会の関係、

そういったところまで考えないと、

本当の意味での住宅にはならないようにも思う。

住宅内部だけきれいにおしゃれにすればいいのではない。

それは、

ひとりだけでは生きていけない、

ひとつの家族だけでは生きていけない、

ということとほとんど同義なのではないか。

住宅設計でいちばん大事で難しいのはこの部分のように思う。

 

 

07| 住宅コンセプト 実例 ~吹き抜け、トップライト~

 

つなぐ空間(吹き抜け、トップライト)

 

私が設計してきた住宅のリビングのほとんどには吹き抜けがある。

上部にトップライトを設けてその吹き抜けを家の中心の空間にすることが多い。

 

・建築家思考の間取り

でも書いたが、

住宅雑誌では例えば1Fがワンルーム状のLDKだとすれば、

2Fは廊下に面して2つ程の子供部屋と主寝室が並んでいて、

ドア一枚だけでそれぞれの個室が他の空間と完全に縁が切れている、

そんな間取り図を多く見るが、

私からするとそれは、

他人同士が暮らしているアパートのような感じがして、

家族が暮らす住宅としては似つかわしくないのではとも思ってしまう。

だから私はそういった設計はできるだけしない。

 

吹き抜けを設ける理由は、

個室を個室のまま閉じ込めないでおくためである。

吹き抜けに面した建具の開閉で、

個室を他の空間と繋いだり閉じたりできるようにしている。

もっと言えば、

吹き抜けを通じて家全体が立体的なワンルームにもなるようにしている。

いわば複層的で立体的なゲルであり竪穴式住居である。

 

 

”保土ヶ谷の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

”保土ヶ谷の家” 断面のダイアグラム、ローコスト狭小住宅、住宅コンセプト

(”保土ヶ谷の家” 断面のダイアグラム)

 

保土ヶ谷の家、吹き抜け、トップライト、ローコスト狭小住宅、住宅コンセプト

(”保土ヶ谷の家” B1Fリビング上部の吹き抜け。1F・2Fの建具が開いている状態)

 

保土ヶ谷の家、吹き抜け、トップライト、ローコスト狭小住宅、住宅コンセプト

(”保土ヶ谷の家” B1Fリビング上部の吹き抜け。1F・2Fの建具が閉じている状態)

 

保土ヶ谷の家、吹き抜け、トップライト、ローコスト狭小住宅、住宅コンセプト

(”保土ヶ谷の家” 階段室上部の吹き抜け)

 

 

”保土ヶ谷の家”のリビングは、

玄関から階段で降りた地下1階にある。

地下に降りたのに、

昼はリビングの3層吹き抜け上部にあるトップライトからは空が見え、

夜には星や月が見える、

というちょっと変わった住宅になっている。

(実はこの設計においてヒントにしたものがある。

画家・香月泰男さんがシベリア抑留の体験を通じて描いた、

「青の太陽」という絵だ。

香月泰男展のカタログではこの絵に言葉が添えられている。

「匍匐訓練をさせられる訓練の折、地球に穴をうがったという感じの蟻の巣穴を見ていた。

自分の穴に出入りする蟻を羨み、蟻になって穴の底から青空だけを見ていたい。

そんな思いで描いたものである。

深い穴から見ると、真昼の青空にも星が見えるそうだ。」

ご興味のある方はこちらからどうぞ。

香月泰男(YSミニ辞典)

この吹き抜けからは青空の中の星は見えないだろうけど、

竣工後の満月の夜、

月明かりだけでお風呂に入れて気持ちが良かった、

というメールをお施主さんから頂いたのを覚えている)

 

保土ヶ谷の家、ローコスト狭小住宅、住宅コンセプト、トップライト

(”保土ヶ谷の家” 3F浴室)

 

この家は住宅密集地にあり、

左右の隣家が近くまで迫って建っていたので、

プライベートスペースを左右の吹き抜け空間で挟んで、

プライバシーを確保している。

(上の断面図を参照)

図中の左がリビングの吹き抜けで、

右が階段室の吹き抜けである。

プライベート・スペースは引戸の開閉によって、

吹き抜け空間と繋いだり切ったりできる。

ダイニングに居ると、

上の階に居る人の気配や音が、

左右の吹き抜けを通じて感じられる家である。

 

 

”上丸子の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)、スケッチ、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”上丸子の家” 平面・断面スケッチ)

 

 

”上丸子の家”は間口4mの細長い狭小住宅である。

建物間口が4mで1階にガレージが必要だったため、

耐力壁が必要のない木造ラーメン構造としている。

構成は地上3階+小屋裏収納(ロフト)の住宅で、

2階がLDK,

3階はインナー・バルコニーと可動式クローゼットを挟んで主寝室と子供室、

ロフトは将来の子供室兼遊び場としての予備室である。

 

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)、3F、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”上丸子の家” 3階とロフトの折戸を閉めた状態)

 

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)、3F、吹き抜け、トップライト

(”上丸子の家” 3階とロフトの折戸を開けた状態)

 

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)、2F、吹き抜け、トップライト

(”上丸子の家” 2階LDK。右上のエキスパンド・メタルの床で吹抜とつながっている

 

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)、2F、吹き抜け、トップライト

(”上丸子の家” 2階LDKからエキスパンド・メタル越しに吹き抜けを見上げる

 

 

3階とロフトは吹き抜けでつながっており、

3階のインナー・バルコニーの床をエキスパンド・メタルにすることで、

北側の長手方向に設けたトップライトからの光が、

2階のLDKにまで降りてくるようにしている。

天気が良い日の日中は、

ロフト、3階、2階とも、

自然光だけで暮らせるほどの充分な採光が可能になっている。

2階の主寝室と子供室、そしてロフトは、

吹き抜け部分とは折戸で仕切られていて、

部分的に開けることも全面開けることも可能である。

この折戸はどの部分からも開閉可能ゆえ、

3階部分はどこからでも戸を開けて部屋に入れる。

折戸の開閉で、

3階もロフトも吹き抜け空間と繋いだり切ったりできる。

折戸が開いていれば、

2階で料理している時でも、

3階やロフトでのお子さんの様子が耳で感じられる住宅になっている。

 

 

 

”鶴ヶ峰の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

鶴ヶ峰の家、吹き抜け、トップライト、変形地に建つ狭小住宅、住宅コンセプト

(”鶴ヶ峰の家” 1Fリビング)

 

鶴ヶ峰の家、吹き抜け、トップライト、変形地に建つ狭小住宅、住宅コンセプト

(”鶴ヶ峰の家” 1Fリビング上部の吹き抜け。2F・2.5Fの建具が開いている状態)

 

鶴ヶ峰の家、吹き抜け、トップライト、変形地に建つ狭小住宅、住宅コンセプト

(”鶴ヶ峰の家” 2.5Fの子供室から吹き抜けを見る。建具が開いている状態)

 

 

”鶴ヶ峰の家”の中心は北側にある2.5層の吹き抜け空間である。

1FのLDKと2F寝室、2.5F(ロフト)の子供部屋が、

吹き抜けを通じて立体的なワンルームになるようにしている。

北側の白い壁でトップライトからの自然光を拡散させることで、

この吹き抜け空間全体の採光をえている。

 

 

”クラスター・ハウス”の場合 (吹き抜け)

 

クラスター・ハウス、吹き抜け、住宅コンセプト

(”クラスター・ハウス” 内部)

 

クラスター・ハウス、吹き抜け、住宅コンセプト

(”クラスター・ハウス” 内部。主寝室の下にダイニングがある)

 

クラスター・ハウス、吹き抜け、住宅コンセプト

(”クラスター・ハウス” 子供室から吹き抜けを見る)

 

 

立体的なワンルーム化の度合いは異なるけれど、

”クラスター・ハウス”もそうだ。

”クラスター・ハウス”は夫婦の部屋、子供の部屋、母の部屋のユニットなどが、

お互いに間合いを取りながらも重なり合ってできている住宅だ。

各ユニットの建具の開閉によって、

中央の吹き抜けを介してそれぞれの個室は関係をつないだり切ったりできる。

ここの吹き抜けはいろいろなレベルに居場所がある立体的なリビングで、

この吹き抜け部分は大きな開口部を通じて四方八方に外部とつながっている。

各ユニット(個室)は小さめの開口部で外部とつながっている。

 

 

 

”中目黒の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

 

中目黒の家、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”中目黒の家” 個室を入れた閉じたボックスの下が開放的なLDKとなっている)

 

中目黒の家、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”中目黒の家”  吹き抜けの壁面や建具を鏡面のステンレス仕上にしているので、空が映り込んでいる)

 

中目黒の家、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”中目黒の家”  吹き抜けの建具を開けると2Fはワンルーム状の空間になる。)

 

中目黒の家、吹き抜け、トップライト、住宅コンセプト

(”中目黒の家” 空や雲、向かい側のマンション、上や下の空間、そして向こう側の空間が浮かび上がる)

(上の4枚:”中目黒の家” この写真は新建築社によるものです。カメラマン:山内 紀人)

 

”中目黒の家”では個室を入れた閉じたボックスを2階に浮かして、

そのボックスの下の開放的な1階をLDKとしている。

中央部のダイニングの上に設けられた吹き抜けの上部にはトップライトがある。

吹き抜けに面した折戸を開けると、

主寝室と子供室はつながり、

2階はほぼワンルーム状の空間になる。

そしてその2階の空間と1FのLDKが吹き抜けを介してつながる。

吹き抜けの壁面や建具を鏡面のステンレス仕上にすることで、

そこには視線の角度によって、

空や雲、向かい側のマンションなどが少し歪んだかたちで映り込む。

さらにその中に上や下の空間、

そして向こう側の空間が浮かび上がり、

方向感覚や距離感が失われ、

外部風景と室内風景がミキシングされた状態になる。


 

 

”王子の家”と”空隙の家”は、

吹き抜け空間を外部の社会空間へと強くつなごうとしている例である。

この2つの住宅は都心にある狭小住宅ゆえ、

家内部だけで生活を完結させるのではなく、

「まちに棲む」という考え方の住宅なので、

外部空間へのつながりの度合いを強めている。

 

 

”王子の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

 

王子の家、吹き抜け、トップライト、土間のある狭小住宅、住宅コンセプト

(”王子の家” 吹き抜け空間から前面道路を見る)

(”王子の家” この写真は新建築社によるものです。カメラマン:楠瀬 友将)

 

王子の家、吹き抜け、トップライト、土間のある狭小住宅、住宅コンセプト

(”王子の家” 暗めの和室(奥さんの仕事部屋)から、明るい吹き抜け空間を見る。)

 

王子の家、吹き抜け、トップライト、土間のある狭小住宅、住宅コンセプト

(”王子の家” 暗めの寝室から外部空間(左)と吹き抜け空間(右)を見る)

 

王子の家、吹き抜け、トップライト、土間のある狭小住宅、住宅コンセプト

(”王子の家” 吹き抜け空間を前面道路から見た夜景)

(”王子の家” この写真は新建築社によるものです。カメラマン:楠瀬 友将)

 

”王子の家”は吹き抜け空間自体が外部とのつながりが大きい分、

立体的なワンルーム化を弱めて、

吹き抜け空間を半外部空間として扱っている。

このようにすることで、

・「内部空間」化された個室

・「半外部空間」化された吹き抜け

・「外部空間」としての敷地周辺

の3つを段階的につなごうとしている。

部屋から部屋へは、

一度吹き抜け空間に出ないと移動できない動線にすることで、

普段の生活と周囲の外部環境を織り交ぜようとしている。

個室は暗めの空間にして、

明るい吹き抜け空間へと自然に視線が行くようにして、

吹き抜けを家の中の「半外部空間」化している。

 

 

”空隙の家”の場合 (吹き抜け、トップライト)

空隙の家|Crevice House| 都心のRC造3階建て狭小住宅、住宅コンセプト

(”空隙の家” 敷地分析図。隣家間の隙間を家の中に延長して貫入させてている)

 

空隙の家|Crevice House| 都心のRC造3階建て狭小住宅、住宅コンセプト

(”空隙の家” 吹き抜けを介して両側に床が跳ね出し、住宅内部は立体的なワンルームとなっている)

 

空隙の家|Crevice House| 都心のRC造3階建て狭小住宅、住宅コンセプト、吹き抜け、トップライト

(”空隙の家” 吹き抜けを介して、敷地周辺の外部環境とつなげている)

 

 

”空隙の家”

隣家間の隙間を家の中に延長して貫入させて、

その部分を3層吹き抜けにすることで、

敷地周囲の外部環境との関係を図っている。

そしてその吹き抜けを介して、

両側にスキップフロア状に床が跳ね出し、

住宅内部は立体的なワンルームとなっている。

各部屋 ⇔ 吹き抜け空間 ⇔ 敷地周囲の外部空間

という内外空間のつなぎ方を考えている。

 

私が設計してきた住宅では、

リビングのしつらえは最低限でしかない。

ここしかないだろうと思った時にダイニングテーブルを設計する程度で、

あとは最低限のテレビ台や収納程度だ。

今のところ、

私にとってリビングはつなぐ空間としてある。

だから、

リビングといった単体の部屋としてのインテリア、

という発想自体があまりないのかもしれない。

各個室は物が置かれたりして、

どうしても人間的な空間になる。

吹き抜け空間くらいは、

空間そのものとして、

他の部屋との関係性、

外部との関係性、

を最重要視して設計したいと考えている。

 

今後はまた設計の仕方・考え方も変わるかもしれない。

・建築家思考の注文住宅 ~注文住宅 のまとめ。核となる空間を!

で書いたように、

もっと人間の情緒や非合理性な面について、

空間に反映させてみたいという思いが強くなってきてもいる。

それは先に書いた、

「全体的な人間」-「部分的な人間」= ?

のひとつの解として非合理性や情緒がある気がしているから。

 

 

08| 住宅コンセプト のまとめ: 建築家選び

 

これからお家を建てようと考えている方は、

誰に設計を依頼するか、

建築家選びに悩まれることだと思う。

建築雑誌やインターネットで検索して、

そこで目にする見た目のデザイン・作風も大事であろう。

それぞれの好みもあるはずである。

 

けど、

見た目のデザインやテクニックとかは、

ある意味真似しやすいものであるし、

それゆえ消費もされやすいものでもある。

それゆえ見た目のデザインとかだけではなく、

その建築家がどういった事を考えて住宅を設計しているのか、

その建築家なりの考え方や価値観を、

出来るだけ確認された方が良いと思う。

 

建築雑誌やホームページに、

その建築家がどういった事を考えて設計しているか、

について書かれていると思う。

その建築家なりの考え方や価値観は何か、

その考え方に共感できるか、

その結果としての建物はどうか、

そこまで確認して建築家を選ばれると、

後々後悔の少ない、

家づくりのパートナーとしての建築家、

を選べるのではと思う。

 

 

 

2023/10/27 更新

”家づくり”シリーズのページは頂いたお問い合わせ等を反映させて頂き、随時更新しています。


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PLUSZERO  ARCHITECT

佐藤森|プラスゼロ一級建築士事務所

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東京都渋谷区本町6-21-1チャイルドビルB1F

T 03-5309-2982
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佐藤森

1973   神奈川県生まれ
1996   早稲田大学理工学部建築学科卒業
1998   同大学大学院修士課程修了
1998-  14ヶ国を経てユーラシア大陸を陸路で横断
2000   アーツ&クラフツ建築研究所
2005-  ミャンマー、インド
2006-  アーツ&クラフツ建築研究所
2008-  プラスゼロ一級建築士事務所


 

 

施工事例


空隙の家
(都心のRC造狭小住宅)

空隙の家|Crevice House| 都心のRC造狭小住宅


王子の家
(土間のある狭小住宅)

王子の家、土間のある狭小住宅


クラスター・ハウス

クラスター・ハウス、Cluster House


鶴ヶ峰の家
(高低差のある変形地に建つ狭小住宅)

鶴ヶ峰の家、高低差のある変形地に建つ狭小住宅


中目黒の家
(トップライトがあるスキップフロアの住宅)

中目黒の家、トップライトのあるスキップフロアの住宅


つくばみらいの家
(旗竿敷地のローコスト平屋注文住宅)

つくばみらいの家、,ローコスト平屋注文住宅


上丸子の家
(間口4m細長い狭小住宅(木造ラーメン))

上丸子の家、間口4mの細長い狭小住宅(木造ラーメン)


保土ヶ谷の家
(ローコストの狭小住宅)

保土ヶ谷の家、ローコストの狭小住宅


百合ヶ丘の家
(スキップフロアの木造住宅)

百合ヶ丘の家、スキップフロアの木造住宅


CASA ESPIRAL

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ちっちゃなハナレ
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Bob's Fit Market 神楽坂店
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新建築 住宅特集11月号
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最もくわしい屋根・小屋組の図鑑 改訂版

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居心地のいい家をつくる注目の設計士&建築家100人の仕事

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現代住宅の納まり手帖

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ELLE DECOR 10月号

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Architecture and Culture 445

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新建築 住宅特集5月号

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最もくわしい屋根・小屋組の図鑑

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新建築8月号 集合住宅特集

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住まいの設計 9・10月号

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渡辺篤史の建もの探訪

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建築知識 11月号

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新建築 住宅特集4月号

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住まいの設計 11・12月号

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MY HOME 100選 VOL.15

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住まいの設計 11・12月号

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MY HOME 100選 VOL.13

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住まいの設計 7・8月号

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(扶桑社)

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注文住宅 春・夏号 表紙

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住まいの設計 5・6月号

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新建築 住宅特集10月号

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渡辺篤史の建もの探訪

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住まいの設計 3・4月号

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(扶桑社)

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mina 1月号

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住まいの設計 11・12月号

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新建築 住宅特集11月号

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ディテール 7月号

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住まいの設計 7・8月号

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MY HOME 100選 VOL.8

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渡辺篤史の建もの探訪BOOK

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住まいの設計 12月号

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佐藤森|PLUSZERO ARCHITECT住宅設計・狭小住宅・注文住宅・デザイン住宅・店舗等の設計・監理を得意とする東京・渋谷にある設計事務所です。

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