2023/02/17 ”住宅設計、基本設計”の流れについて

住宅設計、基本設計 の流れについて

これからお家を建てようと思っても、

設計事務所に依頼したらどういう過程で設計が進むのか分かりにくいと思う。

もちろんお施主さんごとにご要望も違うし敷地も違うので、

それぞれの設計の進行過程は異なる。

けど参考までに”工房のある家”で基本設計の流れを大雑把に振り返ってみる。

けどこれはあくまでも私の事務所の場合。

事務所ごとにやり方も考え方も異なるだろう。

 

敷地を見に行ったり、

敷地周辺の図面や模型を作成する過程で、

北側隣家間の隙間を今回の家の中に延長して貫通させよう、

というコンセプトがまず始めに決まった。

そして西側にも隣家間の隙間があり、

これも家の中に延長して貫通させる。

ただしこちら側はサブ的な要素として。

それが下図。

住宅設計、基本設計

その模型が下の画像。

住宅設計、基本設計

ここで問題になったのは建物の構造形式。

鉄筋コンクリート造で建てることはお施主さんのご希望だった。

ただし高度斜線、道路斜線が厳しい変形敷地だった故、

普通に3階建てにすると屋根がとても複雑な形状になってしまうし、

3階の床面積も余り確保できない。

近隣のボーリングデータで表層から1mちょっとの深さまで盛土で、

その下に関東ローム層のしっかりした地盤がありそうだと分かったこと、

そして道路の排水桝の深さから逆算して、

キッチンの排水をちょっと特殊な横引トラップを使えば、

1F床は地盤から900mmほど下げても自然排水できそうだと分かったこと、

これらのことから1Fを半地下にした。

そうすることで埋めた分は建物の高さが稼げる。

それでも3F建てにするには高さがギリギリなので床の厚さを薄くする必要がある。

そこで思いついたのがキャンチスラブという構造形式。

キャンチスラブにすれば梁が要らないので階高は最小限に抑えられる。

そのアイデアスケッチが下図。

住宅設計、基本設計

その模型が下の画像。

住宅設計、基本設計

天井高さは居室で2.1mほど、

浴室や洗面は1.9m、

ワークスペースは1.4mと低い。

けど中央に3層吹き抜けの6m程の天井高さの空間があるので、

窮屈な印象はないはず。

 

そしてこのキャンチスラブ案が決め手となって現在に至り、

実施図面が下の画像。

 

住宅設計、基本設計

最下層の1Fの床以外は全てキャンチスラブ。

7枚のキャンチスラブで出来るお家。

キャンチスラブの厚みは基本200mmに統一することで、

壁の型枠を再利用しやすいようにしている。

これはCASA  ESPIRALの時にも採用したローコスト化につながるアイデア。

 

設計の過程を大雑把に振り返るとこうなるが、

実際はこんなにすんなり進んだわけではもちろんない。

基本設計では何十という駄目になった案があった。

下の画像はその一部の模型たち。

住宅設計、基本設計

その中で可能性のある考え方を少しずつ、

紆余曲折がありながらも積み重ねていき、

最後まで辿り着けたのが今の案である。

 

基本設計で駄目になった案も決してただの無駄ではない。

その中の部分的なアイデアが最終案にも取り込まれていたり、

今後の他の設計で生きてくるアイデアもある。

そして何十という駄目になった案があるから、

最終的に残った案を責任を持ってお施主さんにお勧めすることが出来る。

私がお施主さんに最終的に提示する案は1つだけ。

けど、こういった過程を踏んでいるからか今迄ほとんど、

こちらから最初に提案した1つの案でお施主さんにも納得してもらえてきた。

だから基本設計を私はとても大事にしている。

 

参考リンク

設計の流れ その1 ”住宅設計、敷地”

設計の流れ その2 ”住宅設計、4つの段階”

設計の流れ その3 ”住宅設計、基本設計”

設計の流れ その4 ”住宅設計、実施設計”

設計の流れ その5 ”住宅設計、見積り”

設計の流れ その6 ”住宅設計、工事監理”