私のところに初めて相談にいらした方のほとんどが、
事務所に置かれている模型の量を見て驚かれる。
けど事務所に置いてある模型は、
今まで作ってきた模型の何十分の一の量でしかない。
置場が無いので主だったもの以外は処理している。
最近では、
設計事務所ではあっても、
模型までは作らないところも多いらしいと聞いた。
私としては考えられない。
私にとっては模型は、
設計において必須の道具だから。
模型をつくらない設計事務所では、
その代わりにパースを作製するところが多いらしい。
CADで簡単にパースが作れるようになったからだろう。
けどパースは、
お施主さんなどへのプレゼンテーション用としては良いのだろうが、
建物の構成を決める基本設計においては、
設計道具としての価値は余りないのではと思う。
出来るだけ良い建物を設計したい、
そう考えている設計者なら、
平面図や断面図といった図面は案外あてにならないということを、
経験として知っているはずと思う。
平面図や断面図においては良い設計ができたと思っても、
いざ模型を作ってみたらまるで良くなかった、
そんな苦い経験もあったはずと思う。
図面はあくまでも2次元でしかなく、
しかも平面図も断面図も、
その後に実物が出来た時に、
目にすることが出来る姿図では決してない。
模型は3次元である。
小さくても、
素材は違っても、
建物の骨格である空間のボリュームやプロポーション等を確認できる。
私が基本設計を始める時にはまず、
1/100の敷地周辺模型と、
1/50の敷地周辺模型をつくる。
それは私が敷地周辺との関係を重要視して設計をしているから。
(例えば”王子の家”や”空隙の家”もそう。
あの敷地だからこそ、ああいった設計の建物になっている。)
1/100の建物のヴォリューム模型とコンセプト模型をいくつも作っては、
1/100の敷地周辺模型に載せて、
周囲との関係も含めて検討を重ねる。
そういった試行錯誤の後、
案が絞られてきたら1/50の模型を作って確認する。
もちろん同時進行で簡単な図面も作成するが、
私の場合は模型での検討を最重要視している。
1/50の模型もいくつも作って、
これなら責任を持ってお勧めできると思えた時に、
はじめてお施主さんに基本設計案を提示する。
設計者の私としても、
模型において良い建物になるはずと確認できてからでないと、
責任を持って案を提示できない。
お施主さんにとっても平面図や断面図よりも、
模型の方が建物全体の構成が分かりやすいはずと思う。
そして実施設計もある程度固まった段階で、
1/20~1/30の大きな模型を作って最終確認をする。
1/100の模型では建物のボリュームやコンセプト、周囲との関係、
1/50の模型ではそれらに加えて建物内部空間と周囲との関係、
1/20~30の模型では主に建物内部についての確認、
というように、
模型のスケールによって主な役割が違う。
特に木造や鉄骨造なら、
骨組みだけの構造模型も必要になる。
ひとつの建物を設計するのに、
1/100のボリューム模型やコンセプト模型は50~100個くらい作る。
1/50の模型も複数つくる。
だから模型置場がなくなってしまうのです・・・
↑1/100のコンセプト模型
↑(上の2つ) 1/50の敷地周辺と建物関係を確認する模型
↑ 1/50の模型
↑ 1/50の木造軸組み模型
↑ 1/30の内観模型
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