先々週ある方が、
多くのハウスメーカーに相談をして、
多くのプランを提示してもらったが、
どれもしっくりこないということで、
私の事務所に相談にいらした。
まずは参考プランを作成してもらえないか、
それを見てから設計契約を結ばせていただきたい、
というお願いだった。
大変申し訳ないが、
設計契約後にしかプランは作成できない旨をお伝えし、
丁重にお断りさせて頂いた。
私の事務所では、
「事前に基本となるプランが念頭にあって、
それを敷地条件に合わせてカスタマイズしていく」
といった設計方法をとっていない。
私が設計する際は、
まずはお施主さんのご要望をひと通りお聞きして、
それを念頭に、
敷地条件や敷地周辺環境を分析して、
ひとつずつ設計を組み立てていく。
プランは事前にではなく、
お施主さんや敷地環境などとの交渉の結果として、
事後的に形成されていく。
つまりお施主さんごとに、
敷地環境ごとに、
設計は異なってゆく。
それゆえ、
お施主さんに責任を持ってお勧めできる案が出来るまでに、
少なくても2か月程度は時間がかかってしまうので、
設計契約後でしかプランを提示できない。
プランを見てから設計契約をしたい、
というお気持ちは当然だとも思う。
どんな設計になるのか分からないまま契約をするのは不安だとも思う。
ただ、
プランを簡単に作って設計契約をし、
それをもとに設計を進めていく、
というのは、
設計者としてはむしろ楽なやり方だけど、
ある意味とても不誠実なやり方ではないかと、
自分は思ってしまう。
それだけプランは大事にするべきもので、
個人的には建物の良し悪しは、
プランを決めていく基本設計の段階でほぼ決まる、
とも思っている。
例えば”王子の家”でも”空隙の家”でも、
簡単につくれるようなプランではない。
お施主さんのご要望をお聞きして、
敷地周辺環境を分析して、
いくつもの案を作っては壊すを繰返して、
ゼロの状態からひとつずつ設計を組み立てていった結果としてできたのが、
”王子の家”や”空隙の家”などである。
将来何十年にも渡って過ごされる建物である。
事前にプランを確認できないのは不安だとは思うが、
結果的にはお施主さんにとっても良いはずと考え、
今のやり方をさせていただいている。
ご理解を頂けたら幸いである。