2024/07/05 LUXMAN L-48A ボリューム交換と調整について

ある方から珍しいお問い合わせを頂いた。
内容は建築設計についてではなく、
何とアンプLUXMAN L-48Aの修理についての相談(笑)

アンプ修理はあくまでも趣味であって、
自己責任の範囲で行っているもの。
私にとってアンプ修理は音楽を楽しむ行為のひとつでもあり、
回路の勉強も含めて行っている。
なので特別詳しいわけでもなく、
責任を持った回答は出来ない。
電気を扱うので感電の恐れがあり危険も伴う。
ただ情報の共有は出来たらと思っている。

まず欲しい情報は回路図だと思う。
これの入手には苦労したが、
このアンプは海外ではL-480という型番で販売されていたらしく、
LUXMAN L-480、circuit diagram
で検索して見つけた。
以下のサイトで英語版のユーザーズ・マニュアルを見ることが出来、
その中に回路図もある。

https://mans.io/files/viewer/522538/22

このサイトには他のアンプの回路図も多くあるので、
大いに参考になると思う。

お問い合わせを頂いた方は、
ボリューム部品が再利用できなくなってしまったらしい。
実は私は1か月程前にボリューム交換などを行っており、
その際にブログ用にまとめた文章もあったが、
そのままアップしないでいた。
参考になればと思い以下にアップする。

 


 

LUXMAN L-48Aでソロピアノやヴォーカルを聴くと、
音源によっては音像が少し右に寄っているように感じることがある。
バランスつまみで左の音量を少し大きくすると音像は中央に寄る。
これでいいのかもしれないが原因が気になる。
アンプもスピーカーも接点という接点は分解などしてメンテナンス済みで、
ガリは一切ない状態。
出力バランスが左右で少しずれているのか?
アイドリング電流がずれているのか?
ボリューム部品自体にギャングエラー(左右の音量偏差)があるのか、
スピーカを置いているこの事務所の空間の問題なのか?
(スピーカーに向って左はRCの壁と開口部、右は本棚)
そもそも私の聴力に左右の耳で差があるのか?
気になるのでボリューム部品の交換、
そしてオフセット調整とバイアス調整をすることにした。

元々のボリュームはあまり良い部品ではなさそうだし、
廻す時の感触が軽すぎるのが気になっていた。
もう少しトルク感が欲しい。
アンプを自作する人たちの間で評判の良い、
RK27シリーズのミニデテント2連ボリュームを選んでみた。
価格(税込で1210円)の割にギャングエラーが最小限に抑えられているらしい。
安心のアルプス電気製である。
(既存のボリュームもアルプス製だが)
門田無線にて50KΩで在庫があるのは21点クリック付だけだったのでそれにした。
ボリュームを廻す時の感触はかなり良くなった。

(左は元々付いていたボリューム、右が新しくつけるボリューム)

 

折角なので元のボリュームと今回のものをテスターで測定し比較してみる。
7時(MIN)、10時、12時、14時、17時(MAX),
それぞれのボリューム位置での抵抗値を測定し、
左右偏差(dB)のグラフにしてみた。
※グラフ化にあたっては、
ぺるけさんのHP「2連ボリュームの左右アンバランス補正」から、
「シミュレーションExcelシート」をダウンロードさせて頂いた。
ぺるけさんの”情熱の真空管アンプ”という本でも勉強させていただいた。
感謝。

ぺるけさんのページ:http://www.op316.com/tubes/tips/tips21.htm

 

上は元々ついていたボリュームの測定結果。
よく使う10時くらいの位置でギャングエラーが最大の-0.58dB。
思っていたほど悪くはないが気になる数値ではある。
(0.58dBは電圧比に換算して1.07倍)
ただメンテナンス後とはいえ、
40年以上も経ってこの性能を維持できているのはすごいのかもしれない。

 

上が今回使う新しいボリューム。
グラフはほぼフラット…
10時位置では-0.06dB(電圧比で1.007倍)、
最大でも-0.19dB(電圧比で1.02倍)、
というかなりの優れもの。
この価格でこの性能はすごいと思う。
さすがアルプス製。
海外の高級アンプでも多く使用されている訳だ…

 

つづいてDCオフセット調整。
テスターをセットしてから電源を入れて、
アンプが落ち着くまで15分くらい放置。
左右ともに少しずれていたようだ。
出来るだけ0mV前後に近づくように調整する。

(上はオフセット調整前)

(上はオフセット調整後)

 

 

次はバイアス調整。
同じくテスターをセットしてから電源を入れて15分ほど放置。
その間に目標にすべき数値を計算。
エミッタ~エミッタ間で45~50mA程度の電流が流れるようにするのが目標。
エミッタ間の抵抗が0.22Ω×2のデュアル抵抗なので、
そのエミッタ抵抗両端で、
45~50mA×0.44Ω=19.8~22.0mVの間で、
左右が出来るだけ一致するよう合わせればいいことになる。
15分後にテスタの数値を確認したのが下の写真。

 

左右ともほぼ22mV前後で調整の必要なし。
44年も前のアンプなのにすごい。
ラックスマンの回路設計が優れているのか・・・。

音出しして確認。
音像が中央になった気がしなくもない・・・
安定感が増した気もする・・・
よいボリュームに変えて、
テスターで調整や確認をした直後だから、
その心理的効果ゆえかもしれない。
これでもしダメなら、
事務所の空間か私の耳の問題だろう。
それとも左右のスピーカーを入れ替えてみたらどうなるのか?
しばらく様子をみることにする。