空を漂う蜘蛛

空に漂う雲を見ると、
時折思い出す話がある。
それは“空を漂う蜘蛛”の話。

ある種類の放浪癖のある蜘蛛は、
最寄りの高い所に登り、
糸を出しながら爪先立ちで待機する。

「この紡績作業は、クモの体を浮上させるだけの強い空気摩擦が
糸の織物にかかってくるまで続く。
そうなったら、クモは脚先で支えを押しのけ、風に運ばれていく。」
(『風の博物誌 上』 L・ワトソン著 木幡和枝訳  河出文庫 からの引用)

この蜘蛛たちは自らが紡ぎだした糸の長さを調節して、
まるでそれをパラシュートのように操りながら、
時には4000メートル以上もの高度の上空を漂うこともあるらしい。

鳥のような羽も無く、
ジェットエンジンのような暴力的な機械も必要とせずに、
たった1本の糸にぶら下がりながら、
はるか上空を漂っている蜘蛛の姿を思い浮かべると、
なぜか少し愉快な気持ちになってしまう。