イエ(個室)と庭と 余白 でつくる関係性|東京・渋谷の設計事務所

イエ(個室)と庭と 余白 でつくる関係性

 

新しく区画されたばかりの旗竿敷地に、庭と暖炉のある平屋の家、というのが建主の要望だった。
設計当時、敷地とその周辺一体は草ぼうぼうの原っぱであり、四方の隣地にはどんな大きさの建物がどんな配置で建つのかが全く分からなかった事、そして大変厳しい予算が、この建物の設計の大きな課題となった。
そんな敷地条件ゆえ、庭の配置をいろいろとスタディするも、どれも決め手がない・・・。

よって周囲にどんな建物が建とうとも余り決定的な影響を受けないような、強い中心性や方向性のない、そして庭と諸室、諸室同士の関係にも強いヒエラルキーがないようなプランが好ましいのではと考えるようになった。

そこで大・小の2つに分割した庭と、個室3つ、それら5つのBOXを旗竿敷地のまとまった広さのある部分にばら撒くように離して配置し、それらの余白との関係だけでプラニングをしようと考えた。

余白部分は様々なプロポーションのコーナーを持ちながらもズルズルと繋がっており、そこには採光確保のため光を透過する雲のような屋根をかけて、この住宅の共有スペースをまとめた。

また旗竿敷地であるがゆえに一層強調されがちの、建物の”奥”の部分が生じないよう、回遊式の動線を確保させることで、諸室同士の並び方、関係のヒエラルキーも弱められるように工夫した。

その結果、家の中にさらに小さな家々が離れて建っているような建物になった。

これは、隣地に囲まれて形成されたスキマのような敷地、隣家間に挟まれた細い路地のようなアプローチを持つ旗竿敷地の形成の成り立ちをそのままなぞっているようで、今回の建物に好ましい形式のように思われた。

各々の小さな家々(個室)の建具の開閉によって、他の個室や共有スペースとの間合いを調整し、そして暖炉からの温気の取り入れの調整もするといった、空間的な対話が可能な住宅になればと考えた。(佐藤森)

 


新建築 住宅特集2011年11月号 特集/平屋的な建ち方 敷地周辺とどう関係性をつくるのか

「つくばみらいの家」

余白

 

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