「構え」としての 内と外|東京・渋谷の設計事務所

「構え」としての 内と外

 

身体にとっての 内と外 は何によって決まるのか?皮膚が境界面だろうか?

しかし手を丸める。するとそこにも内部と外部が生成する。

そういった”構え”としての内/外もあるのではないか?

 

敷地周辺には山々があり、夏の山風の向きは短時間で大きく変化することが気象庁のデータから分かった。

この風を採り込める建物、それを開口部といった建物の境界面上の操作ではなく、建物の”構え”として解くことで、周囲に開かれた住宅にも出来たらと考えた。

建主の要望から多くの個室が必要と考え、個室をユニット化し、それをどのようなルールでクラスター化させるか?が課題となった。

住宅を個室に還元することは、家族を個に分解することでもある。

クラスター化させることは家族の関係性を再構築することでもあり、その際に留意したのは、分解された個の自立と連帯としての家族といった内側の関係性と、家族と周辺といった外側の関係性である。

各層に4つのユニットを余白を設けながら風車状に並べ、層ごとに向きを逆転させる。

すると余白も各層で向きが逆転する風車状の形となる。

これを基本型とし、周辺環境や法規制等の外的条件と機能や動線等の内的条件を同時的な相互作用として捉え、ユニットの大きさや重ね方を調整することで、それらに適応化させた。

それはぎゅっと握った固いこぶしのような緊密で防御的な関係とは違い、軽く丸めた両の手の指を互い違いに組んだような緩やかで開かれた関係をもつ住宅である。

その際に両の手の平や指の間に出来る空間が、積み重ねられたユニット群を鋳型とする吹抜である。

ユニットの吹抜側全面をラワン合板で覆い、外壁に合わせて着色し明度を下げることで、周辺環境をより鮮やかに建物内に引き込もうとした。

この吹抜を介して各ユニットは相互に関係を接続したり切断したり出来る。

吹抜には、四方八方に穿たれたユニット間の隙間から外部の風や光、景色などが流れ込む。

ユニットのズレで生じた動線上には縁側のような場所や、周辺環境を背景とする軒下のような場所もある。

そこを回遊すると、周辺の家々や景色とユニット内外の日常生活が重なり合ったり、非連続的に見え隠れしたりする。

 

安定さと不安定さを備えて飛び飛びに重ね合わされたユニットは、相互に繋がっているようで切れてもいる関係となる。

各ユニットの離散的な関係、そのクラスター化の結果としてのこの住宅が、新たな個と家族と周辺との関係性を持つものになればと考えた。(佐藤森)

 


新建築 住宅特集 2015年4月号 特集/木造の可能性 いま日本の住宅を木でつくること

「クラスター・ハウス」作品紹介

内と外

 

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