外部風景 と 室内風景 をミキシングする
低層住宅地の細長い敷地に建つ、地下1階と地上2階の住宅である。
周囲に対して開放的な1階の共有スペースの上に、2階のプライベートスペースが納められた閉じた箱が浮いている構成としている。
2階の箱をできるだけ軽く浮かせようと考え、2階の床組と屋根は主要構造部以外を木造とすることで軽量化を図り、重量的な偏りが生じないようフラットルーフのシンプルな形状とした。
結果、1階はφ=80mmの細い柱だけで支えられた、構造壁やブレースがひとつもない開放的な空間となっている。
2階は4周すべてを壁に囲まれているのに対して、1階はガラスと目透かしの塀およびガラスとエキスパンドメタルというように、2重のスクリーンで周囲とゆるく仕切られていて、1階と2階は空間の性格が大きく異なっている。
かつ、1階の床面は道路面よりも700mmほど下げることで、北側と東側の擁壁への荷重負担を軽減させると共に、周囲に対して開きつつもこの高低差により道路側からの視線からプライバシーを保つ。
さらにこの高低差とダイニングテーブルやキッチンカウンター面、そして建物周囲の砕石仕上げ面の高さを揃えることで、敷地境界までの場所も内部空間化しようと考えた。
この住宅のもうひとつの特徴は、建物のほぼ中央に設けられた吹抜けである。
ここを通じてのみ、2階のふたつの個室同士、そして1階の共有スペースとが関係性を持つ。
そのプランニングと合わせて、吹抜けをひと工夫することで、それらの空間的関係をデザインできないかと考えた。
加えて外部環境と外部風景をもっと住宅内部に引き込みたいと思い、結果、吹抜け上部にはトップライトを設け、そこに面する壁や建具には鏡面のステンレスシートを貼った。
この吹抜けには、視線の角度によって、空や雲、向かい側のマンションなどが少し歪んだかたちで映り込む。
さらにその中に上や下の空間、そして向こう側の空間が浮かび上がり、方向感覚や距離感が失われ、外部風景と室内風景がミキシングされた状態になる。(佐藤森)
新建築 住宅特集2012年10月号 特集/ディテールコントロール
「中目黒の家」作品紹介
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