無駄な空間 ?
”王子の家”の吹抜空間も、
”工房のある家”の吹抜空間も、
見る人によっては非合理的で”無駄な空間”ととらえらる方もいるかもしれない。
それらの吹抜空間がなければもっと床面積も広く確保できたであろうし、
工事費ももっと合理的なものになったかもしれない。
吹抜空間は温熱環境的にも不利になりがちだし・・・。
けど私自身はどちらの建物においても、
その吹抜空間がその建物の最も重要な核になっていると考えている。
その吹抜空間がなければどちらの建物も成立しないと思っている。
建物の設計には合理性も大事だけど、
そうでない部分も必要だと思う。
合理性が人間でいう理性の面だとすれば、
非合理性は人間でいう情念・情緒のようなものだと思う。
人間にはどちらの面も大事だし、
多くの場合は情念や情緒といった面での方が、
その人独自の魅力を感じることが多い。
人間が生活する建物だって両方の面があった方がいいと思っている。
この非合理性が、
多くのハウスメーカーの建物やマンションに欠けているものなのかもしれない。
不特定多数を相手にコスト重視の考え方ではどうしてもそうなるのだと思う。
お施主さんの価値観や敷地の個性など、
個別のものを相手にしていたら非効率的だという考え方なのだろう。
だから例えば断熱性能とかデータ化しやすいものを、
誰が見ても一見分かりやすい数値を重視する。
けど実際にその場所に居て心地がいいと感じる空間かどうかは、
そういった数値では測れないと思う。
住宅の良し悪しはそこの場所が居心地がいいと感じる空間かどうかが基本だと思う。
どういった空間がその人にとって良い空間なのか、
それこそがその人の価値観であって人によってそれぞれ異なる。
そして先の建物の吹抜空間は建物の構成の要でもあって、
部屋と部屋の関係つまりは家族の人と人との関係や、
家族と敷地周囲の環境との関係を調整している核なる空間なのである。