2024/01/24 「住宅らしさ」を消す

ここで言う「住宅らしさ」とは、
ステレオタイプ化された住宅像のこと。
ハウスメーカーのカタログや、
多くの住宅雑誌で拡散されているような、
モダンリビング風や和風やリゾート風など、
さまざまな呼び方でタイプ化されたスタイルのこと。
こういった意味での「住宅らしさ」は、
本当の意味での住宅らしさなのだろうか?
設計者としてはこの「住宅らしさ」というものを、
まず疑って考え始める必要があると思う。

私自身はこういった既成の「住宅らしさ」のスタイルに寄せて設計をすることに、
強い抵抗がある。
なぜなら、
そういった住宅はインテリア化しやすいからだ。
むしろ既成の「住宅らしさ」は様式化されたインテリアであるからこそ、
自己増殖しやすく、
結果としてステレオタイプ化されてきたともいえる。

ハウスメーカー等の建売住宅では、
目の前には居ない、
見えない住み手のための計画ゆえに、
(つまり住まい手自体がフィクションである計画ゆえ)
そういった「住宅らしさ」はむしろ便利なのだろう、
ステレオタイプ化された住宅像をむしろ利用しているようにも考えられる。
ハウスメーカー等の住宅では、
なぜか驚くほど敷地周囲に対して無頓着(無関心)な設計のものが多く見られるが、
その理由は、
様式化されたインテリアによる「住宅らしさ」を売りにしているからなのかもしれない。
インテリアは外部との接触を遮断するほど、
フィクション化しやすく強度も増すからだ。

私のような設計事務所で、
目の前にいる住み手と交渉を重ねて設計する場合、
既成のスタイルに住み手の生活を当てはめていくのではなく、
その住み手ならではの価値観を反映させようと、
ひとつひとつ積み重ねていくように設計していくことが、
誠実な姿勢のように思う。
つまり住み手と協同して、
その住み手ならではの本当の意味での住宅らしさを創造していくことが、
我々設計者の役割のようにも思う。

ハウスメーカーの住宅や建売住宅、マンションも多く見学してきたけど、
何か違うと感じて私のような設計事務所に相談にいらっしゃる方の多くは、
先のような違和感が根本にあったからのように思う。
設計事務所と打ち合わせを重ねて、
ゼロから住宅を設計していくのには、
住まい手にとっても時間もかかるし労力もかかる。
けどそういった過程を踏まないと得られないものがある、
そう信じて設計を依頼してくれるのだと思う。