2023/12/22 模型という設計道具

私のところに初めて相談にいらした方のほとんどが、
事務所に置かれている模型の量を見て驚かれる。
けど事務所に置いてある模型は、
今まで作ってきた模型の何十分の一の量でしかない。
置場が無いので主だったもの以外は処理している。

最近では、
設計事務所ではあっても、
模型までは作らないところも多いらしいと聞いた。
私としては考えられない。
私にとっては模型は、
設計において必須の道具だから。

模型をつくらない設計事務所では、
その代わりにパースを作製するところが多いらしい。
CADで簡単にパースが作れるようになったからだろう。
けどパースは、
お施主さんなどへのプレゼンテーション用としては良いのだろうが、
建物の構成を決める基本設計においては、
設計道具としての価値は余りないのではと思う。

出来るだけ良い建物を設計したい、
そう考えている設計者なら、
平面図や断面図といった図面は案外あてにならないということを、
経験として知っているはずと思う。
平面図や断面図においては良い設計ができたと思っても、
いざ模型を作ってみたらまるで良くなかった、
そんな苦い経験もあったはずと思う。
図面はあくまでも2次元でしかなく、
しかも平面図も断面図も、
その後に実物が出来た時に、
目にすることが出来る姿図では決してない。
模型は3次元である。
小さくても、
素材は違っても、
建物の骨格である空間のボリュームやプロポーション等を確認できる。

私が基本設計を始める時にはまず、
1/100の敷地周辺模型と、
1/50の敷地周辺模型をつくる。
それは私が敷地周辺との関係を重要視して設計をしているから。
(例えば”王子の家”や”空隙の家”もそう。
あの敷地だからこそ、ああいった設計の建物になっている。)

1/100の建物のヴォリューム模型とコンセプト模型をいくつも作っては、
1/100の敷地周辺模型に載せて、
周囲との関係も含めて検討を重ねる。
そういった試行錯誤の後、
案が絞られてきたら1/50の模型を作って確認する。
もちろん同時進行で簡単な図面も作成するが、
私の場合は模型での検討を最重要視している。
1/50の模型もいくつも作って、
これなら責任を持ってお勧めできると思えた時に、
はじめてお施主さんに基本設計案を提示する。

設計者の私としても、
模型において良い建物になるはずと確認できてからでないと、
責任を持って案を提示できない。
お施主さんにとっても平面図や断面図よりも、
模型の方が建物全体の構成が分かりやすいはずと思う。
そして実施設計もある程度固まった段階で、
1/20~1/30の大きな模型を作って最終確認をする。

1/100の模型では建物のボリュームやコンセプト、周囲との関係、
1/50の模型ではそれらに加えて建物内部空間と周囲との関係、
1/20~30の模型では主に建物内部についての確認、
というように、
模型のスケールによって主な役割が違う。
特に木造や鉄骨造なら、
骨組みだけの構造模型も必要になる。
ひとつの建物を設計するのに、
1/100のボリューム模型やコンセプト模型は50~100個くらい作る。
1/50の模型も複数つくる。
だから模型置場がなくなってしまうのです・・・

 

↑1/100のコンセプト模型

 

↑(上の2つ) 1/50の敷地周辺と建物関係を確認する模型

 

↑ 1/50の模型

 

 

↑ 1/50の木造軸組み模型

 

狭小住宅、工房のある家、模型

↑ 1/30の内観模型